ホームへ働く者のメンタルヘルス相談室
うつ病と光(その1色彩)

長くうつ病を患っていた人が、回復に向かうときそれまでモノトーンの風景がカラーに変わったと言う体験談を聞くことがある。

 野島智司著「ヒトの見ている世界 蝶の見ている世界」(青春新書)を読んで驚いた。人間にとっての可視光は光の波長が380ナノメートルから780メートルのせまい範囲であるが、ある種の昆虫や鳥類は紫外線が見えるのだ。赤、緑、青の三原色に紫外線を加えた4原色になれば、色の世界は違った様相を表す。たとえがヒトには黄色に見えるタンポポも蝶から見れば、白っぽい花びらと赤い中心部に見えるのではないかと想像できるという。太陽から来る電磁波はいくつもの波長の違いがあり、人間の脳が波長を色に変換している事になる。
 宇宙人などがヒトとは違う目の構造を持っているなら、宇宙人の色の世界はヒトとは全く違うかもしれない。ほ乳類の先祖は恐竜全盛時代、夜活動することで生き延びた。長い夜の生活で色彩よりも光の感度を高める方に進化した。ヒトを含む霊長類は三原色を回復させたが、ほ乳類の大部分は色彩を失ったままだという。
 ヒトの目はカメラの仕組みにたとえられる。レンズを通った光は屈折され網膜状では上下逆さまに写る。脳が色彩も含め再構成して像を伝える。現実と思える像も脳のフイルターを通している。脳の三分の一から二分の一の部位が視覚情報の処理に携わっているそうだ。
 うつ病になり色彩を失う。弱ったからだを守るため最小の機能だけ残したのだろうか。ナチス収容所で栄養失調の女性は、メンスがなくなるという。生き残りに必用なものに、絞り込みが起きている。栄養失調からの回復には食べ物が、うつからの回復には精神への食べ物が必用だ。どの食べ物が合うか自分で見つけるしかない。
 だがヒントはある。光を含む五感の感受性、反応力が低下しているのならその回復を図ることだ。低下した五感の中で回復に貢献しそうな感覚は、聴覚か、触覚か、味覚か。音楽で癒やされたヒト、肌(特に顔)のマッサージで癒やされたヒト、お風呂、散歩、写経何でも有りだ。自分に合う薬が見つかり、自分を回復させるきっかけを見つけたヒトは回復できる。
 筆者のお薦めは散歩と青い映像の多いテレビ、たとえばNHKの「ダーウインが来た」録画を早朝起きがけにつける。その後散歩に出、足の裏への反復刺激・景色の移り変わり・鳥の声・肌を包む風にふれる。海と空の多い番組は柔らかい青の刺激が体を包む。ヒトは青に強く反応するようにできているそうだ。

うつ病理解のための書籍を紹介します
いずれも うつ病から躁転や当初から気付かなかった躁に注目。特に躁とうつの混合状態に詳しい。

1.「躁うつ病はここまでわかった」加藤忠史編 日本評論社1600円+税
内容は@躁うつ病の症状と診断
    A躁うつ病の薬物療法
    B躁うつ病の心理社会的治療
    C躁うつ病治療の実際
    D躁うつ病の原因はどこまでわかったか
    E躁うつ病体験記
    F躁うつ病Q A

不安抑うつ臨床研究会主催の講演会の内容を本にしたもの。
この続編は2012年12月開催の講演会でなされた
当日の講演内容と会場質問への回答は「うつ病・認知症コンソーシアム」ホームページで見ることができる。


2.「うつがいつまでも続くのは、なぜ」ジム・フェルプス著 荒井秀樹監訳星和書店 2400円+税
うつ病と思っていたら実は双極U型障害であった。と言うケースがとても多い。躁の期間が短くうつの期間が長いので躁を見逃してしまう。
こういう場合に抗鬱薬の投与が危険となる。どうやって見分けるか詳しく書かれている。躁うつ混合状態も指摘され自殺との関連もわかりやすい。

3.日本うつ病学会 しょうきょくせい障害委員会
双極性障害(躁うつ病)とつきあうためにbd_kaisetsu.pdf へのリンク
4.日本うつ病学会ガイドライン 大うつ病障害gaidorain.pdf へのリンク

5うつ病確聞他の書籍をまとめて紹介します回復を助ける25冊の本

6.うつ病休職サバイバルのための制度活用マニュアル
seidokatuyou.pdf へのリンク
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